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以前頂いた夏に菜々子と昼寝するセンセイ+飛鳥君か卯月くださいリクエストを一緒に混ぜ込んでしまいました申し訳ない。
かやさん(@kaya_pe)家の自宅主くん、森崎飛鳥くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことかやさんより。ありがとうございました!
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「た、だ、い、ま!!」
夕方になっても勢いを失わず、まるで灼き殺そうとするようなキツい太陽光線と追い縋る蒸し暑さから、逃げるようにして玄関に転がり込む。
それらが家の中に入らないように慌ててぴしゃんと扉を閉じて、飛鳥はぐったりと頽れるようにその場に蹲った。
(なんだあの過酷極まりない労働環境、しんどい……!)
呻きは最早音にすらならず、代わりに長い溜息を吐くのが精一杯だ。
今日は、先日花村に依頼されたジュネスでの短期バイトの初日だった。飛鳥が担当したのは屋上で行われるヒーローショーの待機列形成や迷子案内だったが、これが滅茶苦茶大変だった。真夏日の炎天下、列を無視して騒ぎ動きまわる子供たちに振り回され、泣きわめく大量の迷子の面倒を見るのは、テレビの中でシャドウと戦うよりもよっぽどやりづらい。シャドウは武器やスキルで叩けば消えるが、子どもの対処はそんなにシンプルにはいかない。誘導したり、宥めたり、比喩ではなく本気で目が回った。
花村の頼みならばと二つ返事でOKを返してしまったバイトだが、正直考えなし過ぎたと後悔せざるを得なかった。多分同じく助っ人を頼まれた里中もそう思っていることだろう。
(……花村やクマは、いつもあんなところで働いてるんだな)
俺にはとても真似できそうにない。あいつらすごいなと思いながら飛鳥はスニーカーを脱ぎ、上がり框に足を掛ける。ひんやりとした板張りの床の感触が気持ち良く、一歩歩を進めるごとに冷たい空気が火照った頬を掠めた。どうやら居間の冷房は入っているらしい。
「菜々子、ただいまー」
台所に入ると同時に従妹の名前を呼ぶ。しかし彼女からの返事はなかった。
「あれ?」
おかしいなと思って繋がる居間に視線を移す。と、座卓の傍でころんと横になっている従妹の姿が目に入った。
(しまった、昼寝してたのか)
音を立てないようにそろそろと近づきそっと覗き込むと、幸いなことに菜々子の目は覚めていないようだった。座卓の上に広げられた今日の分の宿題はきっちり終えられていて、庭に干していた洗濯物も畳まれて置かれている。どうやら自分の帰りを待っていているうち、睡魔に負けてしまったらしい。
風邪をひいてはいけないと飛鳥は慌ててブランケットをもってきて、そっと彼女の体に掛けてやった。
幸せそうにすよすよと穏やかに眠る菜々子の姿に、我知らず頬が緩む。
体も心もくたくただけれど、自分のことを家で待ってくれている人がいる。それだけで何だか、元気になれる。明日も頑張ろうと、素直に思える。
(叔父さんも、仕事から帰ってくるとこんな気分なのかな)
飛鳥は小さく笑うと、音を立てないようにそっと立ち上がった。
とりあえずシャワーを浴びて、それから俺も菜々子と一緒に少し昼寝をしよう。夕飯は暑いし、すぐに作れるから素麺でいい。あとは枝豆でも茹でて、今日はビールを出してあげてもいいかもしれない。なんだか「お仕事お疲れ様です」とそう言ってあげたい気分なので。
かやさん(@kaya_pe)家の自宅主くん、森崎飛鳥くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことかやさんより。ありがとうございました!
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「た、だ、い、ま!!」
夕方になっても勢いを失わず、まるで灼き殺そうとするようなキツい太陽光線と追い縋る蒸し暑さから、逃げるようにして玄関に転がり込む。
それらが家の中に入らないように慌ててぴしゃんと扉を閉じて、飛鳥はぐったりと頽れるようにその場に蹲った。
(なんだあの過酷極まりない労働環境、しんどい……!)
呻きは最早音にすらならず、代わりに長い溜息を吐くのが精一杯だ。
今日は、先日花村に依頼されたジュネスでの短期バイトの初日だった。飛鳥が担当したのは屋上で行われるヒーローショーの待機列形成や迷子案内だったが、これが滅茶苦茶大変だった。真夏日の炎天下、列を無視して騒ぎ動きまわる子供たちに振り回され、泣きわめく大量の迷子の面倒を見るのは、テレビの中でシャドウと戦うよりもよっぽどやりづらい。シャドウは武器やスキルで叩けば消えるが、子どもの対処はそんなにシンプルにはいかない。誘導したり、宥めたり、比喩ではなく本気で目が回った。
花村の頼みならばと二つ返事でOKを返してしまったバイトだが、正直考えなし過ぎたと後悔せざるを得なかった。多分同じく助っ人を頼まれた里中もそう思っていることだろう。
(……花村やクマは、いつもあんなところで働いてるんだな)
俺にはとても真似できそうにない。あいつらすごいなと思いながら飛鳥はスニーカーを脱ぎ、上がり框に足を掛ける。ひんやりとした板張りの床の感触が気持ち良く、一歩歩を進めるごとに冷たい空気が火照った頬を掠めた。どうやら居間の冷房は入っているらしい。
「菜々子、ただいまー」
台所に入ると同時に従妹の名前を呼ぶ。しかし彼女からの返事はなかった。
「あれ?」
おかしいなと思って繋がる居間に視線を移す。と、座卓の傍でころんと横になっている従妹の姿が目に入った。
(しまった、昼寝してたのか)
音を立てないようにそろそろと近づきそっと覗き込むと、幸いなことに菜々子の目は覚めていないようだった。座卓の上に広げられた今日の分の宿題はきっちり終えられていて、庭に干していた洗濯物も畳まれて置かれている。どうやら自分の帰りを待っていているうち、睡魔に負けてしまったらしい。
風邪をひいてはいけないと飛鳥は慌ててブランケットをもってきて、そっと彼女の体に掛けてやった。
幸せそうにすよすよと穏やかに眠る菜々子の姿に、我知らず頬が緩む。
体も心もくたくただけれど、自分のことを家で待ってくれている人がいる。それだけで何だか、元気になれる。明日も頑張ろうと、素直に思える。
(叔父さんも、仕事から帰ってくるとこんな気分なのかな)
飛鳥は小さく笑うと、音を立てないようにそっと立ち上がった。
とりあえずシャワーを浴びて、それから俺も菜々子と一緒に少し昼寝をしよう。夕飯は暑いし、すぐに作れるから素麺でいい。あとは枝豆でも茹でて、今日はビールを出してあげてもいいかもしれない。なんだか「お仕事お疲れ様です」とそう言ってあげたい気分なので。
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#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
笑子さん(@emiko8520)家の自宅主くん、月森文世くんをお借りしています。
リクエストは勿論のこと笑子さんより。ありがとうございました!
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「花村ー、DVD見ようぜー」
休日の真昼間、突然に鳴り響いたインターホンに玄関の扉を開けた俺を待っていたのは、まるで友人を野球に誘う某国民的アニメの登場人物のような台詞を吐く相棒の姿だった。
「またかよ月森……」
俺はそれをちょっとげんなりした表情で迎え入れる。
月森がレンタルショップで借りてきたDVDを持って俺の家に遊びに来るのは、これでもう三度目になるだろうか。
友人がこうして気兼ねなく家に遊びに来てくれるってのはなかなか嬉しいことではあるんだけど、俺にはそれを素直に喜べない理由が二つあった。
一つは、俺が最近こいつに対してちょっと友情飛び越えた想いを持ってしまっていること。
そして、もうひとつはこいつの選んでくる映画の系統である。
「自分の家で見りゃいいだろ……」
「馬鹿言うなよ、菜々子がうっかり見ちゃってトラウマになったらどうするんだよ。それにお前んちの方がテレビの画質いいし。悪いけどお願い、な?」
部屋に通しながら文句を言えば、そんな返答と共に借りてきたDVDを手渡された。盤面を何気なく見ると、予想通りというかなんというか、有名なホラーゲームの映画版タイトルが印字されている。
……そう。月森は大のホラー映画好きなのである。
これがアクションだったら俺も好きだし、雰囲気のいい恋愛ものとかならちょっとなんかいいカンジになったりしないかなーと思うのだが、流石にホラーでそれを求めるのは難しい。抱きついたり手を握ったところで、怖がってると思われて笑られるのがオチだ。
「去年やってたバイオの映画か……つーかまたゾンビものかよ。好きだね、お前」
「いーだろ、見たかったんだよ。最近やっと通常料金落ちしたんだ」
「新作とか準新作とか、なかなか落ちてこないよな」
「うん。新作の間は借りれる期間も少ないしな…… 沖奈まで即日往復とか嫌だし、少しでもレンタル期間は長い方が嬉しいんだけど」
やれやれと肩を竦める相棒に、俺は思わずあー、と同意の声を漏らした。家の近所にレンタルショップがあれば借りてすぐ見て即日返す、ということもできるが、沖奈くらいの距離があると流石にそれも億劫だ。そのためだけに使われる交通費やガソリン代も馬鹿にならない。
「確かに。こういうとこ不便だよなぁ、八十稲羽」
「これとコンビニに関しては都会が恋しい」
「わかる」
元・都会暮らしのあるあるに二人で頷いて笑いあい、俺は部屋のカーテンを閉めた。差し込んでいた日光が遮られ、代わりに部屋の中を影が埋める。
「さんきゅ」
「いーよ。この方が涼しいし」
ホラーは暗い所で見るのが月森のポリシーであるらしかった。
薄暗い部屋の中、隣に座ってテレビとプレステの電源を入れ、ディスクを挿入する。ぶぅん、という低い駆動音と液晶画面に映し出されるロゴ。何をするでもなくぼんやりとそれを見ていると、不意に月森が袖の端をつんと摘まんで引いた。
「……月森?」
突然の行動にどうかしたかと問いかけると、月森の目がにぃっと楽しそうに弧を描く。
「怖かったら抱きついてもいいよ、花村くん?」
「! ……抜かせ、そっちこそだろ!」
――本当に抱きついてやろうか。そうしたらどんな顔をするのだろうか。なんて。そんなことを頭の隅で考えるも、結局それは実行に移しきれない妄想でしかなく。
かくして今日も俺の部屋には、銃声とゾンビの断末魔が響くのだった。
笑子さん(@emiko8520)家の自宅主くん、月森文世くんをお借りしています。
リクエストは勿論のこと笑子さんより。ありがとうございました!
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「花村ー、DVD見ようぜー」
休日の真昼間、突然に鳴り響いたインターホンに玄関の扉を開けた俺を待っていたのは、まるで友人を野球に誘う某国民的アニメの登場人物のような台詞を吐く相棒の姿だった。
「またかよ月森……」
俺はそれをちょっとげんなりした表情で迎え入れる。
月森がレンタルショップで借りてきたDVDを持って俺の家に遊びに来るのは、これでもう三度目になるだろうか。
友人がこうして気兼ねなく家に遊びに来てくれるってのはなかなか嬉しいことではあるんだけど、俺にはそれを素直に喜べない理由が二つあった。
一つは、俺が最近こいつに対してちょっと友情飛び越えた想いを持ってしまっていること。
そして、もうひとつはこいつの選んでくる映画の系統である。
「自分の家で見りゃいいだろ……」
「馬鹿言うなよ、菜々子がうっかり見ちゃってトラウマになったらどうするんだよ。それにお前んちの方がテレビの画質いいし。悪いけどお願い、な?」
部屋に通しながら文句を言えば、そんな返答と共に借りてきたDVDを手渡された。盤面を何気なく見ると、予想通りというかなんというか、有名なホラーゲームの映画版タイトルが印字されている。
……そう。月森は大のホラー映画好きなのである。
これがアクションだったら俺も好きだし、雰囲気のいい恋愛ものとかならちょっとなんかいいカンジになったりしないかなーと思うのだが、流石にホラーでそれを求めるのは難しい。抱きついたり手を握ったところで、怖がってると思われて笑られるのがオチだ。
「去年やってたバイオの映画か……つーかまたゾンビものかよ。好きだね、お前」
「いーだろ、見たかったんだよ。最近やっと通常料金落ちしたんだ」
「新作とか準新作とか、なかなか落ちてこないよな」
「うん。新作の間は借りれる期間も少ないしな…… 沖奈まで即日往復とか嫌だし、少しでもレンタル期間は長い方が嬉しいんだけど」
やれやれと肩を竦める相棒に、俺は思わずあー、と同意の声を漏らした。家の近所にレンタルショップがあれば借りてすぐ見て即日返す、ということもできるが、沖奈くらいの距離があると流石にそれも億劫だ。そのためだけに使われる交通費やガソリン代も馬鹿にならない。
「確かに。こういうとこ不便だよなぁ、八十稲羽」
「これとコンビニに関しては都会が恋しい」
「わかる」
元・都会暮らしのあるあるに二人で頷いて笑いあい、俺は部屋のカーテンを閉めた。差し込んでいた日光が遮られ、代わりに部屋の中を影が埋める。
「さんきゅ」
「いーよ。この方が涼しいし」
ホラーは暗い所で見るのが月森のポリシーであるらしかった。
薄暗い部屋の中、隣に座ってテレビとプレステの電源を入れ、ディスクを挿入する。ぶぅん、という低い駆動音と液晶画面に映し出されるロゴ。何をするでもなくぼんやりとそれを見ていると、不意に月森が袖の端をつんと摘まんで引いた。
「……月森?」
突然の行動にどうかしたかと問いかけると、月森の目がにぃっと楽しそうに弧を描く。
「怖かったら抱きついてもいいよ、花村くん?」
「! ……抜かせ、そっちこそだろ!」
――本当に抱きついてやろうか。そうしたらどんな顔をするのだろうか。なんて。そんなことを頭の隅で考えるも、結局それは実行に移しきれない妄想でしかなく。
かくして今日も俺の部屋には、銃声とゾンビの断末魔が響くのだった。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
ありよしさん(@ta_halocline55)家の自宅主くん、時任智紘くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことありよしさんより。ありがとうございました!
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――少し、息苦しい。
入学式が始まるからと連れてこられた体育館のあちらこちらから、好奇の視線が自分に向けられていることを、智紘は敏感に感じ取っていた。
スオミでは自分の色彩が珍しがられることはなかったが、日本ではそうもいかないらしい。
(なんかちょっと、やだな)
そんなことを思った時、とん、と不意に背中を叩かれ、とっさに振り返る。
肩越しに振り返ると、同じ位の背丈の男の子が興味深そうに智紘のことを見つめていた。
「ねえ、その色、そめてるの?」
「……ううん、もともとこういう色なの……」
この国では、周りと違うものが疎まれるということは、幼い智紘でももう知っている。
嫌がられてしまうのだろうかと、不安にきゅっと唇を噛んでちいさく俯いた智紘に、彼はぱちんと大きな瞳をひとつ瞬かせて。
「そっか。きれいな色だね!」
直後に満面に浮かべられた好意的な笑みと、その言葉に、智紘は思わず呆気にとられた。
「ぼく、にじょうたかおみ。よろしくね」
「あ、えっと。ぼく、ときとうちひろ」
彼はそんな智紘の様子には構わず、自分のことを指差しながら自己紹介をする。それに少し面喰らいながらも智紘が名乗り返すと、今度は彼の方がきょとんとした顔をした。
「……ぼく?」
「だよ?」
「なんだ。女の子かとおもってた」
「え、ちがうよ!?」
首を振ればごめんと言いながらも彼は笑う。つられて智紘も笑う。
感じていた息苦しさは、いつの間にか消えていた。
ありよしさん(@ta_halocline55)家の自宅主くん、時任智紘くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことありよしさんより。ありがとうございました!
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――少し、息苦しい。
入学式が始まるからと連れてこられた体育館のあちらこちらから、好奇の視線が自分に向けられていることを、智紘は敏感に感じ取っていた。
スオミでは自分の色彩が珍しがられることはなかったが、日本ではそうもいかないらしい。
(なんかちょっと、やだな)
そんなことを思った時、とん、と不意に背中を叩かれ、とっさに振り返る。
肩越しに振り返ると、同じ位の背丈の男の子が興味深そうに智紘のことを見つめていた。
「ねえ、その色、そめてるの?」
「……ううん、もともとこういう色なの……」
この国では、周りと違うものが疎まれるということは、幼い智紘でももう知っている。
嫌がられてしまうのだろうかと、不安にきゅっと唇を噛んでちいさく俯いた智紘に、彼はぱちんと大きな瞳をひとつ瞬かせて。
「そっか。きれいな色だね!」
直後に満面に浮かべられた好意的な笑みと、その言葉に、智紘は思わず呆気にとられた。
「ぼく、にじょうたかおみ。よろしくね」
「あ、えっと。ぼく、ときとうちひろ」
彼はそんな智紘の様子には構わず、自分のことを指差しながら自己紹介をする。それに少し面喰らいながらも智紘が名乗り返すと、今度は彼の方がきょとんとした顔をした。
「……ぼく?」
「だよ?」
「なんだ。女の子かとおもってた」
「え、ちがうよ!?」
首を振ればごめんと言いながらも彼は笑う。つられて智紘も笑う。
感じていた息苦しさは、いつの間にか消えていた。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
観月さん(@mituki_mut)家の自宅主くん、槙原怜司くんをお借りしています。
リクエストは勿論観月さん。ありがとうございました!
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「はぁ……」
不慮の事故により、えらく軽くなってしまった財布の中身を見て小さく溜息を吐く。
まさかブラウザゲームに3万もぶっ込まれるとは思わなかった。流石にそれだけの金を投じただけあってお目当てのものは入手出来たようなので嬉しそうなのはいいのだが、その代償は大きい。
少し複雑な心持で、パソコンに向かう怜司の華奢な背中を見る。
(まぁ、悪いことばっかじゃねーけどさ)
最近の怜司はなかなかアクティブだ。
テレビに影響を受けて格付けチェックを仕掛けてみたり、捨て猫を拾ってきたり、ブラウザゲームに手を出してみたり、コンビニにひとりで出かけてみたり。周囲にあるものに興味を持つことや自主的にできることが増えてきた。
少しずつではあるけれど、泣いたり笑ったり感情も外に出すようになってきたので、俺が毎回なにかしら痛い目を見ている事実さえどこかに置いておけば、結構いい兆候なのかもしれない。
(俺だって、怜司が楽しかったり嬉しかったりするのは、嬉しいんだよ。けどさ)
……せめて食らうダメージが低くなれば、もう少し素直に喜べる気がするんだけれど。
「……ようすけ? どうかした?」
妙に静かにしている俺のことが気になったのか、怜司がすこしきょとんとした表情で振り向く。
「あー、いや、何でもないよ」
その表情を曇らせたくなくて曖昧な笑みを返せば、そう、と呟いて怜司は再びパソコンに向き直った。悲しいかな、俺への興味は現在ゲームより低いらしい。
(…………取りあえず、当面の問題として食費どうすっかな……)
切実な悩みを見透かしたように、足元で腹が減ったといちが鳴いた。
観月さん(@mituki_mut)家の自宅主くん、槙原怜司くんをお借りしています。
リクエストは勿論観月さん。ありがとうございました!
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「はぁ……」
不慮の事故により、えらく軽くなってしまった財布の中身を見て小さく溜息を吐く。
まさかブラウザゲームに3万もぶっ込まれるとは思わなかった。流石にそれだけの金を投じただけあってお目当てのものは入手出来たようなので嬉しそうなのはいいのだが、その代償は大きい。
少し複雑な心持で、パソコンに向かう怜司の華奢な背中を見る。
(まぁ、悪いことばっかじゃねーけどさ)
最近の怜司はなかなかアクティブだ。
テレビに影響を受けて格付けチェックを仕掛けてみたり、捨て猫を拾ってきたり、ブラウザゲームに手を出してみたり、コンビニにひとりで出かけてみたり。周囲にあるものに興味を持つことや自主的にできることが増えてきた。
少しずつではあるけれど、泣いたり笑ったり感情も外に出すようになってきたので、俺が毎回なにかしら痛い目を見ている事実さえどこかに置いておけば、結構いい兆候なのかもしれない。
(俺だって、怜司が楽しかったり嬉しかったりするのは、嬉しいんだよ。けどさ)
……せめて食らうダメージが低くなれば、もう少し素直に喜べる気がするんだけれど。
「……ようすけ? どうかした?」
妙に静かにしている俺のことが気になったのか、怜司がすこしきょとんとした表情で振り向く。
「あー、いや、何でもないよ」
その表情を曇らせたくなくて曖昧な笑みを返せば、そう、と呟いて怜司は再びパソコンに向き直った。悲しいかな、俺への興味は現在ゲームより低いらしい。
(…………取りあえず、当面の問題として食費どうすっかな……)
切実な悩みを見透かしたように、足元で腹が減ったといちが鳴いた。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
ありよしさん(@ta_halocline55)家の自宅主くん、時任智紘くんをお借りしています。
リクエストは勿論ありよしさん。ありがとうございました!
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日本から最も近い欧州と言っても、10時間近くのフライトは流石に堪える。
軽く首を回しながら、智紘はふぅ、と溜息を吐いた。
どうやら少し疲れているらしい。昔はもう少し体力があったのにとも思うが、そろそろ不惑の年を迎えるのだから当然と言えば当然だ。。
かといってこのまま衰えるのも面白くはない。何か運動でも始めた方がいいだろうか。
そんなことを考えながら向かったロビーで、思いもかけない姿を見つけ、智紘は軽く目を見開いた。
「陽介?」
「お、おかえり、智紘」
名を呼べば彼はすぐこちらに気付き、笑って智紘を迎えた。わざわざ迎えに来てくれたらしい。
歳をとっても変わらないその温かな笑みと心遣いに、ふっと疲れていた体が軽くなったような気がした。
「うん、ただいま」