#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
ありよしさん(@ta_halocline55)家の自宅主くん、時任智紘くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことありよしさんより。ありがとうございました!
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――少し、息苦しい。
入学式が始まるからと連れてこられた体育館のあちらこちらから、好奇の視線が自分に向けられていることを、智紘は敏感に感じ取っていた。
スオミでは自分の色彩が珍しがられることはなかったが、日本ではそうもいかないらしい。
(なんかちょっと、やだな)
そんなことを思った時、とん、と不意に背中を叩かれ、とっさに振り返る。
肩越しに振り返ると、同じ位の背丈の男の子が興味深そうに智紘のことを見つめていた。
「ねえ、その色、そめてるの?」
「……ううん、もともとこういう色なの……」
この国では、周りと違うものが疎まれるということは、幼い智紘でももう知っている。
嫌がられてしまうのだろうかと、不安にきゅっと唇を噛んでちいさく俯いた智紘に、彼はぱちんと大きな瞳をひとつ瞬かせて。
「そっか。きれいな色だね!」
直後に満面に浮かべられた好意的な笑みと、その言葉に、智紘は思わず呆気にとられた。
「ぼく、にじょうたかおみ。よろしくね」
「あ、えっと。ぼく、ときとうちひろ」
彼はそんな智紘の様子には構わず、自分のことを指差しながら自己紹介をする。それに少し面喰らいながらも智紘が名乗り返すと、今度は彼の方がきょとんとした顔をした。
「……ぼく?」
「だよ?」
「なんだ。女の子かとおもってた」
「え、ちがうよ!?」
首を振ればごめんと言いながらも彼は笑う。つられて智紘も笑う。
感じていた息苦しさは、いつの間にか消えていた。
ありよしさん(@ta_halocline55)家の自宅主くん、時任智紘くんをお借りしています。
リクエストは勿論のことありよしさんより。ありがとうございました!
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――少し、息苦しい。
入学式が始まるからと連れてこられた体育館のあちらこちらから、好奇の視線が自分に向けられていることを、智紘は敏感に感じ取っていた。
スオミでは自分の色彩が珍しがられることはなかったが、日本ではそうもいかないらしい。
(なんかちょっと、やだな)
そんなことを思った時、とん、と不意に背中を叩かれ、とっさに振り返る。
肩越しに振り返ると、同じ位の背丈の男の子が興味深そうに智紘のことを見つめていた。
「ねえ、その色、そめてるの?」
「……ううん、もともとこういう色なの……」
この国では、周りと違うものが疎まれるということは、幼い智紘でももう知っている。
嫌がられてしまうのだろうかと、不安にきゅっと唇を噛んでちいさく俯いた智紘に、彼はぱちんと大きな瞳をひとつ瞬かせて。
「そっか。きれいな色だね!」
直後に満面に浮かべられた好意的な笑みと、その言葉に、智紘は思わず呆気にとられた。
「ぼく、にじょうたかおみ。よろしくね」
「あ、えっと。ぼく、ときとうちひろ」
彼はそんな智紘の様子には構わず、自分のことを指差しながら自己紹介をする。それに少し面喰らいながらも智紘が名乗り返すと、今度は彼の方がきょとんとした顔をした。
「……ぼく?」
「だよ?」
「なんだ。女の子かとおもってた」
「え、ちがうよ!?」
首を振ればごめんと言いながらも彼は笑う。つられて智紘も笑う。
感じていた息苦しさは、いつの間にか消えていた。
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#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストは笹貫さんより。ありがとうございました!
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――ばりぼりばりばりばりぼり。
自室のドアを開けた瞬間に千馗と零を迎えたのは、どこかリズミカルな響きを持った咀嚼音だ。
音の出処は探すまでもない。広くもない部屋の中でポテトチップスを片手に、ぼんやりとテレビを見ている『彼女』に向かって、千馗は固い声を出した。
「……こら、白」
名を呼べば、彼女――白はくるりとこちらを振り向いて、ポテトチップスを持っていない方の手をゆるりと振って見せた。
「二人とも帰っておったか。おかえり。妾に何ぞ用か?」
「ただいま、白」
「ただいま。なんか用か、じゃないだろ。もうすぐ晩飯だっていうのに、何食べてるんだよ」
「見てわからんか。時期限定のぽてちじゃが」
ずい、と眼前に差し出されたのはパッケージは見慣れたものだったが、普段なら「のりしお
」や「うすしお」などと書かれている部分には、白の言う通り見慣れないフレーバー名が書かれている。その下には時期限定の文字がでかでかと踊っていて、千馗は思わず眉を顰めた。
「菓子会社の策略にまんまと嵌りやがって……呪言花札の番人の名前が泣くぞ?」
「美味い物を美味いと言って何が悪いというのじゃ」
「美味しいのか、それ」
「中々じゃな」
こてんと首を傾げた零の少し的の外れた発言と、白の全く悪びれない発言に、千馗ははぁ、と一つ溜息を吐く。このままでは埒が明かない。
「そういうことを聞いてるんじゃねーっての。話逸らすな。晩飯食べれなくなるぞ」
「ふん、妾の勝手じゃろ」
そう言って白はつんとそっぽを向いてしまう。プライドも高く他人からの干渉をあまり好まない白に対して、これ以上の強要は逆効果だろう。
ならばと千馗は、態と軽く溜息を吐いて言葉を続けた。
「……ポテチ食い過ぎて飯が入らないなんつったら清司郎さんが怒るし、朝子さんが悲しい顔するとおもうけどなー」
「……む」
朝子の名前を出した途端、白が僅かに怯んだのを千馗は見逃さなかった。その隙に彼女の手からひょいとポテトチップスの袋を取り上げる。そのまま無造作に袋の中に手を突っ込むと、数枚のポテトチップスを取り出してバリバリと噛み砕いた。
「あっ、こら!」
「零、残り頼む」
ひょいと隣に立つ零に袋を渡せば、零も千馗と同じようにポテトチップスをもぐもぐと咀嚼し、あぁ、と少し感心した声を漏らす。
「確かに美味い」
「ななななな、なんてことをするのじゃ貴様ら! あああ、妾の楽しみが……!」
「ポテチくらいで大袈裟な」
憤慨する白に、けれども千馗はからからと笑うばかりだ。怒り心頭に発した白が文句を返そうとした瞬間、零の穏やかな声がそれを遮る。
「ぽてちも美味いが、清司郎さんのご飯も美味しい。食べられないのは、勿体無い」
白も、清司郎さんのご飯は好きだろう? とそう問われてしまえば、もはや白に反論の余地などあるわけもなかった。
「ぐぬ……仕方ないのう……」
「そうそう、ご飯はみんなで食べた方がより美味いしな!」
ポテチはまた買ってきてやるからと頭を撫でれば、子ども扱いするでないと不満そうな、それでも少し浮かれた様な声が返ってきた。
リクエストは笹貫さんより。ありがとうございました!
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――ばりぼりばりばりばりぼり。
自室のドアを開けた瞬間に千馗と零を迎えたのは、どこかリズミカルな響きを持った咀嚼音だ。
音の出処は探すまでもない。広くもない部屋の中でポテトチップスを片手に、ぼんやりとテレビを見ている『彼女』に向かって、千馗は固い声を出した。
「……こら、白」
名を呼べば、彼女――白はくるりとこちらを振り向いて、ポテトチップスを持っていない方の手をゆるりと振って見せた。
「二人とも帰っておったか。おかえり。妾に何ぞ用か?」
「ただいま、白」
「ただいま。なんか用か、じゃないだろ。もうすぐ晩飯だっていうのに、何食べてるんだよ」
「見てわからんか。時期限定のぽてちじゃが」
ずい、と眼前に差し出されたのはパッケージは見慣れたものだったが、普段なら「のりしお
」や「うすしお」などと書かれている部分には、白の言う通り見慣れないフレーバー名が書かれている。その下には時期限定の文字がでかでかと踊っていて、千馗は思わず眉を顰めた。
「菓子会社の策略にまんまと嵌りやがって……呪言花札の番人の名前が泣くぞ?」
「美味い物を美味いと言って何が悪いというのじゃ」
「美味しいのか、それ」
「中々じゃな」
こてんと首を傾げた零の少し的の外れた発言と、白の全く悪びれない発言に、千馗ははぁ、と一つ溜息を吐く。このままでは埒が明かない。
「そういうことを聞いてるんじゃねーっての。話逸らすな。晩飯食べれなくなるぞ」
「ふん、妾の勝手じゃろ」
そう言って白はつんとそっぽを向いてしまう。プライドも高く他人からの干渉をあまり好まない白に対して、これ以上の強要は逆効果だろう。
ならばと千馗は、態と軽く溜息を吐いて言葉を続けた。
「……ポテチ食い過ぎて飯が入らないなんつったら清司郎さんが怒るし、朝子さんが悲しい顔するとおもうけどなー」
「……む」
朝子の名前を出した途端、白が僅かに怯んだのを千馗は見逃さなかった。その隙に彼女の手からひょいとポテトチップスの袋を取り上げる。そのまま無造作に袋の中に手を突っ込むと、数枚のポテトチップスを取り出してバリバリと噛み砕いた。
「あっ、こら!」
「零、残り頼む」
ひょいと隣に立つ零に袋を渡せば、零も千馗と同じようにポテトチップスをもぐもぐと咀嚼し、あぁ、と少し感心した声を漏らす。
「確かに美味い」
「ななななな、なんてことをするのじゃ貴様ら! あああ、妾の楽しみが……!」
「ポテチくらいで大袈裟な」
憤慨する白に、けれども千馗はからからと笑うばかりだ。怒り心頭に発した白が文句を返そうとした瞬間、零の穏やかな声がそれを遮る。
「ぽてちも美味いが、清司郎さんのご飯も美味しい。食べられないのは、勿体無い」
白も、清司郎さんのご飯は好きだろう? とそう問われてしまえば、もはや白に反論の余地などあるわけもなかった。
「ぐぬ……仕方ないのう……」
「そうそう、ご飯はみんなで食べた方がより美味いしな!」
ポテチはまた買ってきてやるからと頭を撫でれば、子ども扱いするでないと不満そうな、それでも少し浮かれた様な声が返ってきた。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストは観月さんより。ありがとうございました!
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「たっだいまー!」
玄関の扉を開けると同時に放った言葉に、おう、と短い無愛想な声と、わん! と元気な声が応えた。ててて、とコロマルが足元に寄ってきたので、屈んでわしわしと頭を撫でる。今日もいい触り心地だ。もふもふを堪能して幸せに浸っていると、玄関ロビーの奥から荒垣先輩が姿を見せた。
「今日は早かったな」
「先生が出張で、部活が休みだったんです。だからたまには早く帰って、コロマルの散歩にでも行こうかなと思って」
散歩という単語を聞いた瞬間、コロマルの耳がぴんと立つ。尻尾をぱたぱた振って、もう一声嬉しそうに吠えた。
「ふふ、喜んでもらえてるみたい」
「コロちゃ……コロマルは散歩好きだからな。暗くならないうちに帰って来いよ」
「……良ければ、荒垣先輩も一緒にどうですか?」
「いや、俺は……」
首を横に振りかけた先輩の動きが、コロマルのつぶらな目に見上げられた瞬間に止まる。くぅん……と寂しそうな声で鳴くという更なる駄目押しに、先輩は思わず助けを求めるかのように私の方に視線を移して、それからぴたりと固まってしまった。
「……先輩?」
「わふ?」
コロマルと二人、どうかしましたかと首を傾げて聞くと、ややあって、硬直から回復した先輩は、諦めたように長い溜息を吐いて。
「……わかったよ、行く。行くからお前ら、頼む、揃ってそんな目で見んな」
そう呻くように呟いた。
リクエストは観月さんより。ありがとうございました!
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「たっだいまー!」
玄関の扉を開けると同時に放った言葉に、おう、と短い無愛想な声と、わん! と元気な声が応えた。ててて、とコロマルが足元に寄ってきたので、屈んでわしわしと頭を撫でる。今日もいい触り心地だ。もふもふを堪能して幸せに浸っていると、玄関ロビーの奥から荒垣先輩が姿を見せた。
「今日は早かったな」
「先生が出張で、部活が休みだったんです。だからたまには早く帰って、コロマルの散歩にでも行こうかなと思って」
散歩という単語を聞いた瞬間、コロマルの耳がぴんと立つ。尻尾をぱたぱた振って、もう一声嬉しそうに吠えた。
「ふふ、喜んでもらえてるみたい」
「コロちゃ……コロマルは散歩好きだからな。暗くならないうちに帰って来いよ」
「……良ければ、荒垣先輩も一緒にどうですか?」
「いや、俺は……」
首を横に振りかけた先輩の動きが、コロマルのつぶらな目に見上げられた瞬間に止まる。くぅん……と寂しそうな声で鳴くという更なる駄目押しに、先輩は思わず助けを求めるかのように私の方に視線を移して、それからぴたりと固まってしまった。
「……先輩?」
「わふ?」
コロマルと二人、どうかしましたかと首を傾げて聞くと、ややあって、硬直から回復した先輩は、諦めたように長い溜息を吐いて。
「……わかったよ、行く。行くからお前ら、頼む、揃ってそんな目で見んな」
そう呻くように呟いた。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストはさくひさんより。ありがとうございました!
----------------------------------
「今までお世話になりました」
「……へ?」
ぺこりと頭を下げられて、俺の頭は一瞬真っ白になった。
呆気にとられる俺に構わず、卯月は淡々と言葉を続ける。
「明日からは、何とかひとりでも大丈夫だと思うから。長い間、迷惑かけたな」
「ちょっ、ちょっと待って卯月さん!?」
慌てて彼の肩を両手で掴む。
ちょっと待って、なんでいきなり別れ話!? 喧嘩も何もしてないよな!?
「なんだよ、何慌ててんの?」
「慌てるわ!! なんでいきなり別れ話持ち出して来てんの!?」
ヤだよ俺別れるなんて! と半ば悲鳴のように叫ぶと、卯月は銀色の双眸をぱちんと大きく瞬かせた。
「誰も別れるなんて言ってないけど?」
「だって明日からひとりで大丈夫って……!」
「あぁ、違う違う。夜寝る時の話だよ」
そろそろ寒さも和らいできたからさ。と、ほっとしたように笑う表情にどっと力が抜けた。
「なんだよもー、紛らわしい……」
「ごめんごめん、冬の間、ありがとな。暖かかったよ」
ぽんと軽く肩を叩かれる。
「……おう」
それをちょっと寂しく感じたのは、秘密だ。
リクエストはさくひさんより。ありがとうございました!
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「今までお世話になりました」
「……へ?」
ぺこりと頭を下げられて、俺の頭は一瞬真っ白になった。
呆気にとられる俺に構わず、卯月は淡々と言葉を続ける。
「明日からは、何とかひとりでも大丈夫だと思うから。長い間、迷惑かけたな」
「ちょっ、ちょっと待って卯月さん!?」
慌てて彼の肩を両手で掴む。
ちょっと待って、なんでいきなり別れ話!? 喧嘩も何もしてないよな!?
「なんだよ、何慌ててんの?」
「慌てるわ!! なんでいきなり別れ話持ち出して来てんの!?」
ヤだよ俺別れるなんて! と半ば悲鳴のように叫ぶと、卯月は銀色の双眸をぱちんと大きく瞬かせた。
「誰も別れるなんて言ってないけど?」
「だって明日からひとりで大丈夫って……!」
「あぁ、違う違う。夜寝る時の話だよ」
そろそろ寒さも和らいできたからさ。と、ほっとしたように笑う表情にどっと力が抜けた。
「なんだよもー、紛らわしい……」
「ごめんごめん、冬の間、ありがとな。暖かかったよ」
ぽんと軽く肩を叩かれる。
「……おう」
それをちょっと寂しく感じたのは、秘密だ。
#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
手前味噌で申し訳ないですが、拙作の「10年後のふたり」シリーズの設定を使用しています。
リクエストはとうこさんより。ありがとうございました!
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互いに恥ずかしい告白を交し合って二週間、それは突然に訪れた。
「デートしませんか、里中さん」
「……へ」
日課となった寝る前の電話のやり取りで、花村の口から発されたその一言にあたしの頭は真っ白になった。
「いや、そろそろ盆が近いから夏休み取るんだ。折角だからどっか遊びに行かね?」
「え、あ」
「……仕事忙しい?」
「え、えっと、あたしは夏休みお盆とずれちゃうから遠出とかは難しいけど、ふつーの休みはちゃんとあるから、大丈夫!」
慌ててそう答えると、電話の向こうで花村の笑う声がする。
「そっか。そんじゃ沖奈にでも行こうぜ。こっちの夏休み期間あとでメールすっから、都合のいい日折り返してくれ」
「わ、わかった!」
「へへ、楽しみにしてる。そんじゃおやすみ、里中」
「う、うん。花村もおやすみー」
挨拶を交わしあって、ぷつんと通話が切れる。携帯の画面を見ながら、しばし放心。
デートって。
あたしと、花村が?
頭の中で復唱すると、なんだか今更ながらにデートという単語が重みを持ってくる。なにこれ、すっごく顔が熱い。
得体の知れない謎の気恥ずかしさに、あたしは思わずベッドの上でごろんごろんと転がる羽目になったのだった。
手前味噌で申し訳ないですが、拙作の「10年後のふたり」シリーズの設定を使用しています。
リクエストはとうこさんより。ありがとうございました!
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互いに恥ずかしい告白を交し合って二週間、それは突然に訪れた。
「デートしませんか、里中さん」
「……へ」
日課となった寝る前の電話のやり取りで、花村の口から発されたその一言にあたしの頭は真っ白になった。
「いや、そろそろ盆が近いから夏休み取るんだ。折角だからどっか遊びに行かね?」
「え、あ」
「……仕事忙しい?」
「え、えっと、あたしは夏休みお盆とずれちゃうから遠出とかは難しいけど、ふつーの休みはちゃんとあるから、大丈夫!」
慌ててそう答えると、電話の向こうで花村の笑う声がする。
「そっか。そんじゃ沖奈にでも行こうぜ。こっちの夏休み期間あとでメールすっから、都合のいい日折り返してくれ」
「わ、わかった!」
「へへ、楽しみにしてる。そんじゃおやすみ、里中」
「う、うん。花村もおやすみー」
挨拶を交わしあって、ぷつんと通話が切れる。携帯の画面を見ながら、しばし放心。
デートって。
あたしと、花村が?
頭の中で復唱すると、なんだか今更ながらにデートという単語が重みを持ってくる。なにこれ、すっごく顔が熱い。
得体の知れない謎の気恥ずかしさに、あたしは思わずベッドの上でごろんごろんと転がる羽目になったのだった。