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書き散らかしたもの置き場
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#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストは笹貫さんより。ありがとうございました!
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 ――ばりぼりばりばりばりぼり。
 自室のドアを開けた瞬間に千馗と零を迎えたのは、どこかリズミカルな響きを持った咀嚼音だ。
 音の出処は探すまでもない。広くもない部屋の中でポテトチップスを片手に、ぼんやりとテレビを見ている『彼女』に向かって、千馗は固い声を出した。
「……こら、白」
 名を呼べば、彼女――白はくるりとこちらを振り向いて、ポテトチップスを持っていない方の手をゆるりと振って見せた。
「二人とも帰っておったか。おかえり。妾に何ぞ用か?」
「ただいま、白」
「ただいま。なんか用か、じゃないだろ。もうすぐ晩飯だっていうのに、何食べてるんだよ」
「見てわからんか。時期限定のぽてちじゃが」
 ずい、と眼前に差し出されたのはパッケージは見慣れたものだったが、普段なら「のりしお
」や「うすしお」などと書かれている部分には、白の言う通り見慣れないフレーバー名が書かれている。その下には時期限定の文字がでかでかと踊っていて、千馗は思わず眉を顰めた。
「菓子会社の策略にまんまと嵌りやがって……呪言花札の番人の名前が泣くぞ?」
「美味い物を美味いと言って何が悪いというのじゃ」
「美味しいのか、それ」
「中々じゃな」
 こてんと首を傾げた零の少し的の外れた発言と、白の全く悪びれない発言に、千馗ははぁ、と一つ溜息を吐く。このままでは埒が明かない。
「そういうことを聞いてるんじゃねーっての。話逸らすな。晩飯食べれなくなるぞ」
「ふん、妾の勝手じゃろ」
 そう言って白はつんとそっぽを向いてしまう。プライドも高く他人からの干渉をあまり好まない白に対して、これ以上の強要は逆効果だろう。
 ならばと千馗は、態と軽く溜息を吐いて言葉を続けた。
「……ポテチ食い過ぎて飯が入らないなんつったら清司郎さんが怒るし、朝子さんが悲しい顔するとおもうけどなー」
「……む」
 朝子の名前を出した途端、白が僅かに怯んだのを千馗は見逃さなかった。その隙に彼女の手からひょいとポテトチップスの袋を取り上げる。そのまま無造作に袋の中に手を突っ込むと、数枚のポテトチップスを取り出してバリバリと噛み砕いた。
「あっ、こら!」
「零、残り頼む」
 ひょいと隣に立つ零に袋を渡せば、零も千馗と同じようにポテトチップスをもぐもぐと咀嚼し、あぁ、と少し感心した声を漏らす。
「確かに美味い」
「ななななな、なんてことをするのじゃ貴様ら! あああ、妾の楽しみが……!」
「ポテチくらいで大袈裟な」
 憤慨する白に、けれども千馗はからからと笑うばかりだ。怒り心頭に発した白が文句を返そうとした瞬間、零の穏やかな声がそれを遮る。
「ぽてちも美味いが、清司郎さんのご飯も美味しい。食べられないのは、勿体無い」
 白も、清司郎さんのご飯は好きだろう? とそう問われてしまえば、もはや白に反論の余地などあるわけもなかった。
「ぐぬ……仕方ないのう……」
「そうそう、ご飯はみんなで食べた方がより美味いしな!」
 ポテチはまた買ってきてやるからと頭を撫でれば、子ども扱いするでないと不満そうな、それでも少し浮かれた様な声が返ってきた。
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