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書き散らかしたもの置き場
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意外、と思われるかもしれないけれど、一年の中で俺が一番好きな季節は冬だったりする。
 まぁ、正しくは、好きになったのはほんの数年前。その理由はひどく単純だ。

 深々と冷える冬の夜、ベッドの中で微睡んでいたところに、こん、こん、と控えめなノックの音が響いた。
「……花村、起きてる?」
「……ん。起きてるよ」
 静寂を出来るだけ乱さぬようにと幽かな声で紡がれる呼びかけ。それに上体を起こしながら応えると、かちゃりと小さく音を立ててドアが開かれる。その向こうには、枕を抱えた卯月が所在無さげに立っていた。
「どうした?」
 答えなんか分かりきっているけれど、それでもつい問いかけてしまう。
 だってほら、恥ずかしそうに顔を俯けて視線を逸らす姿は、とても可愛らしいので。
「……その。寒いから……今日も、一緒に寝ても、いい?」
「勿論いいよ。おいで、卯月」
 毛布を捲り上げ、ぽん、とベッドマットを叩いて呼んでやると、卯月の表情が嬉しそうにふわりと綻んだ。
 後ろ手にドアを閉め、いそいそとベッドに上がってきたその身体をぎゅっと強く抱きしめて、そのまま二人で倒れこむ。卯月が腕の中で小さく笑う声が、暖かく俺の心を満たした。

 もう一度言おう。俺は冬が好きである。
 何故なら、普段は遠慮がちな恋人が、唯一素直に俺に甘えてくる時期なので。
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とうこさん(@mashirou25)家の真白くんと花村くん。コンビ。
ごめんなさい真白くんの思慮深い感じが全くでなかった…!(切腹)
技量不足が物凄い滲み出ておりますがこんなんで良ければお納めください…!

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 俺は一体、この手の中の物体をどうすればいいのだろうか。

 目下、俺の頭を悩ませているのは、実習棟の一階にいる男子からの貰い物だった。
 先日から彼に入手を依頼されていた針銀鉱。テレビの中で見つけたそれを渡したところ、礼だと笑顔で渡された紙袋。その中身は、銅線の巻かれたコイルと、いくつかの電子部品と、ダイヤルのついた『ラジオ』。それからティッシュの空箱にぐるぐると銅線を巻き付けた、彼言うところの『アンテナ』だった。
 「良い出来だから、使ってみてよ」と手渡されたこれらだが、正直どう使えばいいのか俺には見当もつかない。こういった工作とかには疎いんだ。扱い方を本人に聞こうにも、彼は依頼の品を渡した直後に上機嫌で下校していってしまった。さてどうすべきかと途方に暮れていると、「おーい、高石ー」と聞き慣れた呼び声がしたので振り返る。ぱたぱたと足音を立てて、花村が駆け寄ってきた。彼の動きにあわせてオレンジ色のメッセンジャーバッグが元気に跳ねる。
「なに、その紙袋」
 花村は俺のそばで立ち止まると、俺の持つ紙袋の中身を覗き込んで、思いきり首を傾げた。どうやら彼もこういうラジオは初見であるらしい。
「ラジオ、らしい。使い方は、よく分からないけど」
「……なんか俺の知ってるラジオと違うような気がするんだけど、聞けんの? 電源、どれ?」
「分からない……ゲルマラジオ、って言うらしいんだけど」
「ゲルマラジオ……? ちょっと待ってな」
 一言そう断ると、花村はポケットから引っ張り出した携帯を弄りはじめる。かちかちかちかち。と、響く高速の打音。いつも思うのだけれど、どうやったらこんなに早く携帯を操作できるようになるのだろうか。俺には一生無理な気がする。花村すごい。
 俺の感心を他所に、花村は暫く携帯の画面とにらめっこしていたが、不意にむ、と表情を硬くした。そのまま30秒ほど待つと、今度は顰められていた眉がへにゃりと情けなく崩れる。
「高石、これ分かるか? 俺全然だわ……」
 諦めの言葉と共に差し出された画面を覗き込む。そこにはゲルマラジオの回路図と、仕組みが記してあった。俺はどちらかといえば文系寄りではあるが、技術の授業で習ったぶんくらいなら何とかわからなくもない。見慣れない図形と文字を一生懸命目で追ってみる。
「……えっと……あれ、回路図に電源がない? あ、電波を電源として動くのか。すごいな」
「え、そんなこと出来るのか? そんじゃこれ、今すぐ使えるってこと?」
「出来るみたいだ。えっと、こっちの端子にイヤホンつないで……あとはこのアンテナ? をこっちにつないで電波拾えばいいのかな」
「ふぅん。電波なら高いとこの方が捕まえやすいかな。そんじゃ屋上でも行ってみようぜ」
 さらりと挙げられた花村の提案に、思わず彼の顔を凝視して、ぱちんと瞬きを一つ。
「……花村も聞くの?」
「え、聞かせてくれねーの!?」
「いや、そういう訳じゃないけど……まぁいいか。とりあえず行ってみよう」
「おう」
 花村と二人、連れ立って、屋上へ向かう。放課後の屋上は、人が少ない。今日は里中もいないようだ。出入り口の傍にいる天気予報士志望の女子に挨拶をしながら、いつもの定位置に腰かける。花村がメッセンジャーバッグの中からイヤホンを取り出して、ラジオの端子につないだ。
「イヤホンも持ってたのか。ヘッドホン通常装備のくせに」
「万が一こっちが壊れたときの予備に、一応な。安い奴だから音質は良くねーけど」
 一つのイヤホンを左右で分けあって、耳に押し込む。適当にアンテナをつないで設置し、手元のラジオ本体のダイヤルをくるくると回すと、花村が鳶色の目を丸くした。
「聞く局決めてあんの? ってか、周波数分かるのか?」
「叔父さんが聞いてたから、ひとつだけ分かる。1584。NHK第一」
「そりゃまたベタな。でも確かに拾いやすいかも。電波強そうだ」
 そんなやり取りを交わしながら周波数を合わせる。けれど、しばらく待ってみてもイヤホンからは何の音も聞こえてはこない。二人でちらりと視線を交し合って、それからうぅん、と小さく唸った。
「……なにも聞こえないな」
「んー……アンテナの方向が悪いとか?」
 ちょっとアンテナ、動かしてみようか。そう言って花村が、アンテナを軽く持ち上げたその瞬間。
『――そ――では、次――ニュース――す――』
 途切れ途切れではあるけれど、確かに聞こえたその音に。
 俺が感嘆の声を零すより早く、花村が叫んだ。
「っわ、すげぇ!! 音ちっさいけど聞こえた! なにこれ!」
「ちょ、落ち着け、そんなに騒いだら聞こえないだろう」
「だって、すげぇじゃん! こんなんでほんとにラジオ拾えんのか!」
 すごいすごいと目を輝かせ、花村は頑是ない子供のようにはしゃぐ。その姿を見ていたら、なんだかだんだん俺まで楽しくなってきた。
「……うん。うん、すごいな」
「な!」
 そう言って花村は満面の笑みを浮かべる。
 ふと、これをくれた彼が、ぽつりと話してくれた思い出話が甦った。幼いころ、女の子と一緒にラジオを聞いたのだと、それがとても楽しかったと、優しい顔で笑って、話してくれた。彼と彼女もまた、わくわくして、どきどきして、きらきらとした、こんな時間を、気分を味わっていたのだろうか。
「……それはとても、素敵な体験だな」
「へ?」
「いや、こっちの話」
 きょとんとする花村に微笑みを返して、そっと目を閉じる。
 幽かに聞こえるラジオの音は、飛び飛びで、小さいけれど。どこか、懐かしくて暖かい。
ありよしさん(@ta_halocline55)家の智紘くんと花村さん。花主。
多分同居してすぐくらいの話じゃないかなあ…などと。
二人が描き切れていない感満載ですが、こんなのでよろしければ…!

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 全長にして約15cm。材質は竹。見た目は、小さく細い棒。
 その先端は細く削られ、45度ほどに曲げられていて、逆側には梵天と呼ばれるふわふわとした球状の鳥の羽がついている。
 智紘はその棒――所謂耳掻きを右手で弄びながら、ふぅ、と小さな溜息を吐いた。
「突然「頼みがある」なんて言うから、何を言い出すのかと思ったら。まさか耳掃除のお願いとはね」
「や、なんかここんとこ聞こえが悪いような気がして、そういや最近やってねぇなって思って。で、どうせやるなら智紘に膝枕してやってもらいたいかなー、なんて思っちゃいまして?」
 智紘の言葉に、依頼主こと陽介は悪びれることもなくへらりと笑って、「駄目かな」などと言いながらあざとく首を傾げて見せた。その態度に退く気がないことを感じ取り、智紘はやれやれと肩を落とす。
「……膝枕。俺のじゃ硬いと思うけど、いいの?」
「全然問題ない! むしろ智紘のがいいの! 恋人の膝枕で耳かきは男のロマンだろ!」
「俺はそんなロマン感じたことないけど……」
 力説する陽介の主張には同意しかねたようだが、結局は「まあ、いいか」という思考に落ち着いたらしい。智紘はおもむろに正座に座り直すと、ぽん、と太腿を叩いて「ほら、おいで」と笑った。なにせ智紘は陽介に甘い。
 誘われるまま床に転がり、揃えられた膝の上に頭を乗せると、じんわりと暖かな智紘の体温が伝わってきた。やさしい手がそっと陽介の髪に触れる。
「痛かったりしたら、言ってね」
「おう」
 返事をしてからややあって、そろり、と智紘の指先が耳に触れる感触。軽く耳の縁を引かれたかと思うと、耳かきの先端が耳孔を擦った。耳の奥をかりかりと引っ掻かれる感覚は少しこそばゆいけれど、気持ちが良い。これはうっかり目を閉じたら寝てしまうかもしれない。
「痛くない?」
「大丈夫。ていうか、はー、やばい、めっちゃくちゃ気持ち良いわこれー……」
「そうなの? ……それなら今度、俺もやってもらおうかな」
「おう、任せとけ……って、わ、くすぐったい」
 梵天の部分で耳を一撫でされて身じろぐ陽介に、智紘はくすりと笑いながら「少しだけ、じっとして」と優しく陽介の頭を撫でる。
「……うん、こっち側は綺麗になったかな。反対側やるから、向き変えてくれる?」
「あいよ」
 上体を起こして逆方向を向き、再び智紘の膝に頭を預けると、陽介の視界は智紘で埋まる。すん、と軽く鼻を鳴らすと、智紘の匂いがした。陽介の好きな匂いだ。
「ちひろ」
「うん」
「ちぃ」
「……どうしたの、陽介?」
 疑問の声と共に智紘の手が止まる。表情は見えないが、多分不思議そうな顔をしているのだろうと容易に想像はついた。
「へへ、なんとなく呼びたくなっただけ。なんだかすっげー、幸せだなって思ってさ」
 特別なことなど何もない。けれど声を掛ければ返事がすぐに返ってくること。手を伸ばせば容易に触れられる距離に居ること。たったそれだけのことが、無性に嬉しいんだ。
 そう思ったままを伝えると、不意に智紘は黙り込んでしまった。耳掃除をしてくれていた手もぴたりと止まってしまっている。
「……ちぃ?」
 突然に落ちた沈黙に、陽介は彼の名を呼ぶ。何か気に障る事を言っただろうかと、そんな不安を抱いたのは、ほんの束の間。
「……うん。そうだね、俺も幸せだよ」
 小さく呟くその声音が、ひどく甘やかだったものだから。
「~~っ、ちぃー!!」
「あ、こら動くな! 危ないだろ!」
 胸の奥から溢れだす愛しさに耐えかねて思わず体を起こしかけた陽介だったが、その動作は鋭い声にあっさりと制されてしまった。
 ちぇ、と拗ねた声を上げて大人しく体勢を戻すと、不意に智紘の胴が少し傾ぐ。
 おや、と陽介がそれを疑問に思った瞬間、耳に入ってきたのは竹棒の感触ではなく。
「……それは、あとでね」
 なんて、心をくすぐるような吐息と囁き。
 
 ……ああもう、幸せすぎて、どうしよう。
 そう思わず呻いた陽介に、智紘は「どうもしなくていいんだよ」と、軽く笑った。
「何が楽しいんだよ、こんなの」
 ぼやく卯月の首筋に、後ろからそっと皮の首輪を巻き付ける。
 暗い赤色をしたそれと、卯月の白い肌のコントラストが目に鮮やかで、色の選択に間違いはなかったなと内心でこっそりほくそ笑んだ。
「楽しい、とはちょっと違うかなぁ。なんつーか、いつもと違う恋人が見たい? というか」
「だったらもうちょっとまともな方向の要求を出してくれ」
 銀の尾錠に端を通し、苦しくならないように、けれど緩すぎないように長さの調整をする。穴に留め金を通すと同時、く、と息を詰めた音が耳に届いた。
 控えめで、けれど確かな反応に、ぞくりとした快感が背中を駆けていく。
「だってどうせならこういうエロいほうがいいじゃん」
「……以前の自縛要求といい、なんなのお前。そういう趣味?」
「趣味というほどじゃない、と思ってるけど……まぁあれだ、男子高校生の性的好奇心ってことでひとつ」
「ひとつじゃねえよこの馬鹿……ッ!?」
 首輪を留め終え、指先で首輪の感触を確かめるふりをして、彼の性感帯である耳にそっと触れた。
 軽く、掠めるようにして縁をなぞってやる。びくんとわかりやすく肩が跳ねるのを見て、思わず笑みが零れた。かわいい。
「感じちゃった?」
「うるさい……ッ、耳触んな!」
「えー、それじゃあこっち」
「ひっ!? うわなんかぬるっとした!? 何!?」
「白い項が無防備に目の前にあったので舐めてみました」
「何してんだよド変態!」
 流石にこれ以上やると実力行使が飛んできそうだったので、俺はちょっかいを掛けるのをやめて卯月の前へと移動する。首輪の前部には、リードを引っ掛ける為のリング状の銀の金具がついているが、そこまですると確実にボコられる未来が見えたので、今回はそれは無しだ。
 改めて正面から卯月を見つめる。物理的に刺さりそうな鋭い視線はとりあえずスルーしておくとして、嵌めた首輪は太過ぎず細過ぎず、程良い存在感とエロさを醸し出していた。うん、グッジョブ俺。よくやった。
「うん、似合う。やっぱいいセンスしてるわ俺」
「どんな自画自賛だよ……うぅ、なんか息苦しい気がする……」
「え、苦しい? もう少し緩める?」
「いや、呼吸が辛いわけじゃないけど。やっぱり、慣れない」
「ふぅん。ほんとに良く似合ってるけどなぁ。マリーちゃんみたいに通常装備にしちゃえば?」
 思ったままの感想を口に出せば、重い前髪の隙間から覗く眉が思い切り顰められるのが見えた。
「嬉しくない。つーかマリーはともかく俺にそういう趣味はない」
「褒めてんだから素直に受け取っとけよー、な?」
 言いながら、俺は首輪のリングに指を通し、ぐいっと卯月の顔を引き寄せ、咄嗟に声を上げようと開かれた唇に自分のそれを押し付けた。
「ッ!?」
 卯月の手が俺の胸元に置かれる。多分突き飛ばして離れようとする腹積もりだろうけれど、それは許さない。空いた手で卯月の後頭部を押さえつけ、捻じ込んだ舌で咥内を弄る。口蓋や舌の裏側など弱い所を擽ると、んぅ、と艶めいた音が零された。舌を絡める頃になれば、胸の上の手は最早抵抗の素振りを見せず、ただ縋りつくような状態になっている。
 手のひらに触れる銀糸の髪の柔らかい感覚、触れて擦る粘膜の熱さ、響く卑猥な水音、それから、白い肌に良く映える首輪の赤。

 自分が卯月を『所有』している。
 そんな錯覚に、眩暈がする。

 ――やばい、これ予想以上にいいわ。
 じわじわと身体に溜まる熱に耐えかねて、唇を離すと同時に卯月の身体を床に押し倒した。抵抗が怖いので両手はひとまとめに頭の上で押さえつける。マウントを取っている限り、早々崩されることはないだろう。
「っ、は……ちょ、離せ! 何サカってんだ!!」
「うん、ごめん。さっきそういう趣味ないって思ってたけど、あったみたいだ。これ、めっちゃ興奮するわ」
 俺の下で荒い息を吐いて、眦には涙を湛えてこちらを睨みつける卯月に感じるのは、恐怖でも申し訳なさでもなくて。
 ただ単に、こいつを抱いて滅茶苦茶にしたいって欲だけだ。
「卯月、可愛い……なぁ、抱かせて?」
「ふざけ……ッ!?」
 質問の体をとってはみたけど、正直もう止まれそうにない。だから卯月の言葉は、もう一度キスで塞いで飲みこんだ。
 後で多分滅茶苦茶怒られるし殴られるとは思うけど、そこはまあ、痛くもしないし気持ち良くするつもりなので加減していただきたい。
「兎角にこの世は住みにくい」
 その有名な文句をを綴ったのは、かの文豪、夏目漱石であると俺は記憶している。確か物語は『草枕』であっただろうか。
 俺は、彼の言葉に深く同意するものである。
 見れば見るほど、声に出すほど、全くこの言葉は真理であるとしか言い様が無い。漱石の時代から早百年近く、どれ程技術が進み、世界が広がろうとも、人の世の生き辛さは悲しい哉、然程変わりは無いのかもしれない。
 漱石は作中、俗世間の煩わしい人間関係を指してこう評したと記憶しているが、この世が住みにくいと感ずる原因は人それぞれであろう。
 『草枕』の画家のように人間関係に嫌気が差した人、不甲斐ない政治に憤る人、一向に実現しない世界平和を憂いて泣く人、ママ友という名のライバル達との熾烈なる水面下の争いに火花を散らしている人、上司の禿げ頭に殺意を募らせる人、今日の晩飯の献立に頭を悩ます人――人の悩み事は、人の数だけある。
 さて。では何故このような「悩み」が発生するのか。その理由は至極簡単なことで、我々は皆、残念ながら、完全なる予定調和の中に生きているわけではないからだ。日々突発的に発生する大小様々な問題。それらに我々は大いに悩み、疑い、惑う。神の悪戯とはなんと無慈悲なことであろう。
 俺は確信している。此の世に神がいるのだとすれば、そいつは恐らく超弩級のサディストであろう。世の中には人を痛めつける事を生業としているボンデージファッションに身を包んだバラ鞭装備の素敵なお姉様や、サングラスにスーツを正装とするヤのつく自由業の方等が存在しているが、その方々ですら裸足で逃げ出すであろうレベルの正真正銘のドS野郎である。
 だがしかし、我々は彼の存在の気まぐれによる試練などに屈してはならないのだ。いかなる無理難題を押し付けられようと、艱難辛苦を耐え忍び、持てる知恵と技術とそして力の全てを尽くし、奴の振り翳す不条理に対して徹底抗戦をしなければいけない。何故ならそれが人の尊厳を守る唯一の道であるからである。我々は強大な存在の手のひらで踊るばかりの繰り人形ではないと、知らしめねばならない。
 だから見ていろ、神よ。俺はその道のお姉様に馬上鞭でしばかれたり蝋燭を垂らされたりして屈することはあるかもしれないが、貴様にだけは決して屈しない。
 
 気づけば前置きが長くなってしまったが、つまり何が言いたいかというと。俺は今、不条理な神の与えし試練の真っ只中に居るということだ。
 家を出てから、10分ほど経って気づいたひとつの異変。
 狭い革靴の中、右の親指だけに感じるこの限りなく無駄な開放感。

 賢明な諸氏ならもうお分かりであろう。
 そう。
 ――靴下に穴が、開いている。

【続かない】
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