ありよしさん(@ta_halocline55)家の智紘くんと花村さん。花主。
多分同居してすぐくらいの話じゃないかなあ…などと。
二人が描き切れていない感満載ですが、こんなのでよろしければ…!
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全長にして約15cm。材質は竹。見た目は、小さく細い棒。
その先端は細く削られ、45度ほどに曲げられていて、逆側には梵天と呼ばれるふわふわとした球状の鳥の羽がついている。
智紘はその棒――所謂耳掻きを右手で弄びながら、ふぅ、と小さな溜息を吐いた。
「突然「頼みがある」なんて言うから、何を言い出すのかと思ったら。まさか耳掃除のお願いとはね」
「や、なんかここんとこ聞こえが悪いような気がして、そういや最近やってねぇなって思って。で、どうせやるなら智紘に膝枕してやってもらいたいかなー、なんて思っちゃいまして?」
智紘の言葉に、依頼主こと陽介は悪びれることもなくへらりと笑って、「駄目かな」などと言いながらあざとく首を傾げて見せた。その態度に退く気がないことを感じ取り、智紘はやれやれと肩を落とす。
「……膝枕。俺のじゃ硬いと思うけど、いいの?」
「全然問題ない! むしろ智紘のがいいの! 恋人の膝枕で耳かきは男のロマンだろ!」
「俺はそんなロマン感じたことないけど……」
力説する陽介の主張には同意しかねたようだが、結局は「まあ、いいか」という思考に落ち着いたらしい。智紘はおもむろに正座に座り直すと、ぽん、と太腿を叩いて「ほら、おいで」と笑った。なにせ智紘は陽介に甘い。
誘われるまま床に転がり、揃えられた膝の上に頭を乗せると、じんわりと暖かな智紘の体温が伝わってきた。やさしい手がそっと陽介の髪に触れる。
「痛かったりしたら、言ってね」
「おう」
返事をしてからややあって、そろり、と智紘の指先が耳に触れる感触。軽く耳の縁を引かれたかと思うと、耳かきの先端が耳孔を擦った。耳の奥をかりかりと引っ掻かれる感覚は少しこそばゆいけれど、気持ちが良い。これはうっかり目を閉じたら寝てしまうかもしれない。
「痛くない?」
「大丈夫。ていうか、はー、やばい、めっちゃくちゃ気持ち良いわこれー……」
「そうなの? ……それなら今度、俺もやってもらおうかな」
「おう、任せとけ……って、わ、くすぐったい」
梵天の部分で耳を一撫でされて身じろぐ陽介に、智紘はくすりと笑いながら「少しだけ、じっとして」と優しく陽介の頭を撫でる。
「……うん、こっち側は綺麗になったかな。反対側やるから、向き変えてくれる?」
「あいよ」
上体を起こして逆方向を向き、再び智紘の膝に頭を預けると、陽介の視界は智紘で埋まる。すん、と軽く鼻を鳴らすと、智紘の匂いがした。陽介の好きな匂いだ。
「ちひろ」
「うん」
「ちぃ」
「……どうしたの、陽介?」
疑問の声と共に智紘の手が止まる。表情は見えないが、多分不思議そうな顔をしているのだろうと容易に想像はついた。
「へへ、なんとなく呼びたくなっただけ。なんだかすっげー、幸せだなって思ってさ」
特別なことなど何もない。けれど声を掛ければ返事がすぐに返ってくること。手を伸ばせば容易に触れられる距離に居ること。たったそれだけのことが、無性に嬉しいんだ。
そう思ったままを伝えると、不意に智紘は黙り込んでしまった。耳掃除をしてくれていた手もぴたりと止まってしまっている。
「……ちぃ?」
突然に落ちた沈黙に、陽介は彼の名を呼ぶ。何か気に障る事を言っただろうかと、そんな不安を抱いたのは、ほんの束の間。
「……うん。そうだね、俺も幸せだよ」
小さく呟くその声音が、ひどく甘やかだったものだから。
「~~っ、ちぃー!!」
「あ、こら動くな! 危ないだろ!」
胸の奥から溢れだす愛しさに耐えかねて思わず体を起こしかけた陽介だったが、その動作は鋭い声にあっさりと制されてしまった。
ちぇ、と拗ねた声を上げて大人しく体勢を戻すと、不意に智紘の胴が少し傾ぐ。
おや、と陽介がそれを疑問に思った瞬間、耳に入ってきたのは竹棒の感触ではなく。
「……それは、あとでね」
なんて、心をくすぐるような吐息と囁き。
……ああもう、幸せすぎて、どうしよう。
そう思わず呻いた陽介に、智紘は「どうもしなくていいんだよ」と、軽く笑った。
多分同居してすぐくらいの話じゃないかなあ…などと。
二人が描き切れていない感満載ですが、こんなのでよろしければ…!
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全長にして約15cm。材質は竹。見た目は、小さく細い棒。
その先端は細く削られ、45度ほどに曲げられていて、逆側には梵天と呼ばれるふわふわとした球状の鳥の羽がついている。
智紘はその棒――所謂耳掻きを右手で弄びながら、ふぅ、と小さな溜息を吐いた。
「突然「頼みがある」なんて言うから、何を言い出すのかと思ったら。まさか耳掃除のお願いとはね」
「や、なんかここんとこ聞こえが悪いような気がして、そういや最近やってねぇなって思って。で、どうせやるなら智紘に膝枕してやってもらいたいかなー、なんて思っちゃいまして?」
智紘の言葉に、依頼主こと陽介は悪びれることもなくへらりと笑って、「駄目かな」などと言いながらあざとく首を傾げて見せた。その態度に退く気がないことを感じ取り、智紘はやれやれと肩を落とす。
「……膝枕。俺のじゃ硬いと思うけど、いいの?」
「全然問題ない! むしろ智紘のがいいの! 恋人の膝枕で耳かきは男のロマンだろ!」
「俺はそんなロマン感じたことないけど……」
力説する陽介の主張には同意しかねたようだが、結局は「まあ、いいか」という思考に落ち着いたらしい。智紘はおもむろに正座に座り直すと、ぽん、と太腿を叩いて「ほら、おいで」と笑った。なにせ智紘は陽介に甘い。
誘われるまま床に転がり、揃えられた膝の上に頭を乗せると、じんわりと暖かな智紘の体温が伝わってきた。やさしい手がそっと陽介の髪に触れる。
「痛かったりしたら、言ってね」
「おう」
返事をしてからややあって、そろり、と智紘の指先が耳に触れる感触。軽く耳の縁を引かれたかと思うと、耳かきの先端が耳孔を擦った。耳の奥をかりかりと引っ掻かれる感覚は少しこそばゆいけれど、気持ちが良い。これはうっかり目を閉じたら寝てしまうかもしれない。
「痛くない?」
「大丈夫。ていうか、はー、やばい、めっちゃくちゃ気持ち良いわこれー……」
「そうなの? ……それなら今度、俺もやってもらおうかな」
「おう、任せとけ……って、わ、くすぐったい」
梵天の部分で耳を一撫でされて身じろぐ陽介に、智紘はくすりと笑いながら「少しだけ、じっとして」と優しく陽介の頭を撫でる。
「……うん、こっち側は綺麗になったかな。反対側やるから、向き変えてくれる?」
「あいよ」
上体を起こして逆方向を向き、再び智紘の膝に頭を預けると、陽介の視界は智紘で埋まる。すん、と軽く鼻を鳴らすと、智紘の匂いがした。陽介の好きな匂いだ。
「ちひろ」
「うん」
「ちぃ」
「……どうしたの、陽介?」
疑問の声と共に智紘の手が止まる。表情は見えないが、多分不思議そうな顔をしているのだろうと容易に想像はついた。
「へへ、なんとなく呼びたくなっただけ。なんだかすっげー、幸せだなって思ってさ」
特別なことなど何もない。けれど声を掛ければ返事がすぐに返ってくること。手を伸ばせば容易に触れられる距離に居ること。たったそれだけのことが、無性に嬉しいんだ。
そう思ったままを伝えると、不意に智紘は黙り込んでしまった。耳掃除をしてくれていた手もぴたりと止まってしまっている。
「……ちぃ?」
突然に落ちた沈黙に、陽介は彼の名を呼ぶ。何か気に障る事を言っただろうかと、そんな不安を抱いたのは、ほんの束の間。
「……うん。そうだね、俺も幸せだよ」
小さく呟くその声音が、ひどく甘やかだったものだから。
「~~っ、ちぃー!!」
「あ、こら動くな! 危ないだろ!」
胸の奥から溢れだす愛しさに耐えかねて思わず体を起こしかけた陽介だったが、その動作は鋭い声にあっさりと制されてしまった。
ちぇ、と拗ねた声を上げて大人しく体勢を戻すと、不意に智紘の胴が少し傾ぐ。
おや、と陽介がそれを疑問に思った瞬間、耳に入ってきたのは竹棒の感触ではなく。
「……それは、あとでね」
なんて、心をくすぐるような吐息と囁き。
……ああもう、幸せすぎて、どうしよう。
そう思わず呻いた陽介に、智紘は「どうもしなくていいんだよ」と、軽く笑った。
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