皮膚の薄い部分に、花村の同じところが触れる。
軽く吸われ、瞼を閉じる。濡れた舌先につつかれ薄く口を開けば、するりと入り込んできた。
だいぶ慣れてきたものだ、なんて、咥内を好きなように弄られながらも他人事のように思う。最初はそれこそ、押しつけるだけの、子どものようなキスしかできなかったくせに。
唇を離され瞼を開けると、嬉しそうにゆるんだ鳶色の視線にぶつかった。
基本的に花村は、懐に入れた相手に対しては感情を隠すことをしない。だから多分、俺とのキスは、彼にとっては嬉しいとか、喜ばしいとか、そういう感情を伴う行為であるらしい。
……男とのキスなんて、数ヶ月前なら全力で嫌がっていただろうにな。
「へへ、どうよ。俺も少しはうまくなっただろ?」
「少しはね」
「なんだよー。そりゃお前に比べりゃ経験値低いけどさ!」
くそー、と分かりやすくふてくされてみせるこの男は、本当にあの花村陽介なのだろうか。そんなことをも考えてしまう。
分かっている。花村をこう変えたきっかけは、間違いなく俺で。 そして俺が、これを望んでいたことは、確かなのだけれど。
かわいい女の子が好きだった、『普通』だった花村を、男同士の恋愛なんていう、普通じゃない道に引き込んでしまったことに、後悔を覚えていないかといえば嘘だ。
この関係はきっと、花村も、周囲も、そして俺自身も。誰も幸せなんかにしてくれない。
だから、引き返すならきっと、今のうちだ。
……それが最善の道だと分かっているのに。それでも、浅ましくて弱い俺は。
「じゃあさ、練習するから。もう一回させて?」
そんな花村の要求を断ることもできず。
「……仕方ないなぁ」
薄っぺらな言葉と態度で、自分も花村も誤魔化して。
そっと目を伏せ、全てを見なかったことにした。
軽く吸われ、瞼を閉じる。濡れた舌先につつかれ薄く口を開けば、するりと入り込んできた。
だいぶ慣れてきたものだ、なんて、咥内を好きなように弄られながらも他人事のように思う。最初はそれこそ、押しつけるだけの、子どものようなキスしかできなかったくせに。
唇を離され瞼を開けると、嬉しそうにゆるんだ鳶色の視線にぶつかった。
基本的に花村は、懐に入れた相手に対しては感情を隠すことをしない。だから多分、俺とのキスは、彼にとっては嬉しいとか、喜ばしいとか、そういう感情を伴う行為であるらしい。
……男とのキスなんて、数ヶ月前なら全力で嫌がっていただろうにな。
「へへ、どうよ。俺も少しはうまくなっただろ?」
「少しはね」
「なんだよー。そりゃお前に比べりゃ経験値低いけどさ!」
くそー、と分かりやすくふてくされてみせるこの男は、本当にあの花村陽介なのだろうか。そんなことをも考えてしまう。
分かっている。花村をこう変えたきっかけは、間違いなく俺で。 そして俺が、これを望んでいたことは、確かなのだけれど。
かわいい女の子が好きだった、『普通』だった花村を、男同士の恋愛なんていう、普通じゃない道に引き込んでしまったことに、後悔を覚えていないかといえば嘘だ。
この関係はきっと、花村も、周囲も、そして俺自身も。誰も幸せなんかにしてくれない。
だから、引き返すならきっと、今のうちだ。
……それが最善の道だと分かっているのに。それでも、浅ましくて弱い俺は。
「じゃあさ、練習するから。もう一回させて?」
そんな花村の要求を断ることもできず。
「……仕方ないなぁ」
薄っぺらな言葉と態度で、自分も花村も誤魔化して。
そっと目を伏せ、全てを見なかったことにした。
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