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書き散らかしたもの置き場
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『やったな陽介、家族が増えるぞ!』
 なんて。どっかで聞いたような不穏なセリフを吐きながらその日ご主人が連れてきたのは、まるで夜空中のお星さまを集めたような、きらきらした銀色の毛皮を持った兎だった。
『あんまりにもきれいで、一目惚れしちゃって。飼うことにしちゃった』
「買うことにしちゃったって。俺がいるのに」
『悠、って名前を付けたんだ。いじめるなよ、陽介?』
「いじめたりなんかしねーよ!」
 思わず反論するが、ご主人はからからと笑うばかりだ。くっそ、知ってたけど通じてねえ。
 俺たち、人間の言うところの【動物】の言葉は、ニンゲンにだけは通じない。犬も猫も、鳥も、みんな会話できるのに、不思議だ。
 そうまで思ったところで、そういえば兎と喋るのは初めてだと思い当る。
 この綺麗な兎は、どんな声で喋るのだろう?
 むくりと湧いた好奇心に従って、俺は口を開いた。
「なぁなぁ」
 兎に話しかけると、長い耳がぴくりと動いた。硝子玉みたいな目がこちらを向く。
 それから、ぐぅ、と低い音で鳴いた。どうやら警戒されているらしい。
「俺、陽介ってんだ。これからよろしくなー」
 害意がないと分かってもらえるように、出来る限り優しい声色で言う。
 硝子玉はその後しばらくじっと俺を見つめていたが、しかし、突然、物も言わずふいっと視線を逸らした。
 分かりやすい拒絶のリアクションに、落胆と不満が胸中を満たす。
 なんだよ、雑種犬の俺なんかとは話せないってか?
「……あぁ、野蛮な犬風情と喋ることなんか、なんもないって? そりゃ悪うございましたね」
 皮肉をたっぷり込めてそう言っても、奴の視線が俺に戻ることはない。
 その大きな耳は飾りか? 聞こえているくせに、嫌な奴。
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