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書き散らかしたもの置き場
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「兎角にこの世は住みにくい」
 その有名な文句をを綴ったのは、かの文豪、夏目漱石であると俺は記憶している。確か物語は『草枕』であっただろうか。
 俺は、彼の言葉に深く同意するものである。
 見れば見るほど、声に出すほど、全くこの言葉は真理であるとしか言い様が無い。漱石の時代から早百年近く、どれ程技術が進み、世界が広がろうとも、人の世の生き辛さは悲しい哉、然程変わりは無いのかもしれない。
 漱石は作中、俗世間の煩わしい人間関係を指してこう評したと記憶しているが、この世が住みにくいと感ずる原因は人それぞれであろう。
 『草枕』の画家のように人間関係に嫌気が差した人、不甲斐ない政治に憤る人、一向に実現しない世界平和を憂いて泣く人、ママ友という名のライバル達との熾烈なる水面下の争いに火花を散らしている人、上司の禿げ頭に殺意を募らせる人、今日の晩飯の献立に頭を悩ます人――人の悩み事は、人の数だけある。
 さて。では何故このような「悩み」が発生するのか。その理由は至極簡単なことで、我々は皆、残念ながら、完全なる予定調和の中に生きているわけではないからだ。日々突発的に発生する大小様々な問題。それらに我々は大いに悩み、疑い、惑う。神の悪戯とはなんと無慈悲なことであろう。
 俺は確信している。此の世に神がいるのだとすれば、そいつは恐らく超弩級のサディストであろう。世の中には人を痛めつける事を生業としているボンデージファッションに身を包んだバラ鞭装備の素敵なお姉様や、サングラスにスーツを正装とするヤのつく自由業の方等が存在しているが、その方々ですら裸足で逃げ出すであろうレベルの正真正銘のドS野郎である。
 だがしかし、我々は彼の存在の気まぐれによる試練などに屈してはならないのだ。いかなる無理難題を押し付けられようと、艱難辛苦を耐え忍び、持てる知恵と技術とそして力の全てを尽くし、奴の振り翳す不条理に対して徹底抗戦をしなければいけない。何故ならそれが人の尊厳を守る唯一の道であるからである。我々は強大な存在の手のひらで踊るばかりの繰り人形ではないと、知らしめねばならない。
 だから見ていろ、神よ。俺はその道のお姉様に馬上鞭でしばかれたり蝋燭を垂らされたりして屈することはあるかもしれないが、貴様にだけは決して屈しない。
 
 気づけば前置きが長くなってしまったが、つまり何が言いたいかというと。俺は今、不条理な神の与えし試練の真っ只中に居るということだ。
 家を出てから、10分ほど経って気づいたひとつの異変。
 狭い革靴の中、右の親指だけに感じるこの限りなく無駄な開放感。

 賢明な諸氏ならもうお分かりであろう。
 そう。
 ――靴下に穴が、開いている。

【続かない】
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