#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストは観月さんより。ありがとうございました!
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薬研藤四郎、またの名を薬研通吉光。
硬い薬研を貫き通すだけの鋭さ、強さを持ちながらも、主人の命を奪うを良しとせず、傷一つ付けなかったという逸話を持つその刃に宿るその御霊は、うつくしい少年の姿をしていた。
黒曜の髪に白皙の肌、紫水晶の瞳。すらと伸びた四肢は細く、儚さすら感じられる。
けれど、彼は紛うことなく『薬研藤四郎』そのものであった。
敵と相対すれば臆することなく疾風の如き速さで懐へと飛び込み、一片の迷いも慈悲もなく一息に、その急所を貫き息の根を止める。
あの細い身体のどこにそんな力があるのかと思う程に激しい気を吐いて、薬研藤四郎は戦場を駆ける。その働きは、太刀や大太刀にも引けを取らぬものであった。
けれど、ひとたび戦場を離れると、薬研への評価はがらりと変わる。
本丸での彼は、常に飄々と、しかし泰然とした態度を崩すことなく在る。けれど決して他者を拒んでいるわけではなく、寧ろ進んで面倒を見る、いわば兄貴分のような存在だった。医術の心得も持ち合わせており、彼を頼りにするものは刀剣の種類を問わず多い。
儚い容姿に折れぬ心と類なき強さ。
烈火の如き苛烈さと、全てを受け入れる大地のような度量の広さ。
人にも物事にも様々な面があるとは知っているし理解しているけれども、薬研ほど多くの面を持つ存在を見たことはなかった。
「薬研はなんていうか、すごいよねえ。アンバランスが重なって綺麗にバランスとってるというか」
感嘆混じりの溜息と共にそう呟くと、近侍である薬研の兄、一期一振はくすりと小さく笑った。
リクエストは観月さんより。ありがとうございました!
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薬研藤四郎、またの名を薬研通吉光。
硬い薬研を貫き通すだけの鋭さ、強さを持ちながらも、主人の命を奪うを良しとせず、傷一つ付けなかったという逸話を持つその刃に宿るその御霊は、うつくしい少年の姿をしていた。
黒曜の髪に白皙の肌、紫水晶の瞳。すらと伸びた四肢は細く、儚さすら感じられる。
けれど、彼は紛うことなく『薬研藤四郎』そのものであった。
敵と相対すれば臆することなく疾風の如き速さで懐へと飛び込み、一片の迷いも慈悲もなく一息に、その急所を貫き息の根を止める。
あの細い身体のどこにそんな力があるのかと思う程に激しい気を吐いて、薬研藤四郎は戦場を駆ける。その働きは、太刀や大太刀にも引けを取らぬものであった。
けれど、ひとたび戦場を離れると、薬研への評価はがらりと変わる。
本丸での彼は、常に飄々と、しかし泰然とした態度を崩すことなく在る。けれど決して他者を拒んでいるわけではなく、寧ろ進んで面倒を見る、いわば兄貴分のような存在だった。医術の心得も持ち合わせており、彼を頼りにするものは刀剣の種類を問わず多い。
儚い容姿に折れぬ心と類なき強さ。
烈火の如き苛烈さと、全てを受け入れる大地のような度量の広さ。
人にも物事にも様々な面があるとは知っているし理解しているけれども、薬研ほど多くの面を持つ存在を見たことはなかった。
「薬研はなんていうか、すごいよねえ。アンバランスが重なって綺麗にバランスとってるというか」
感嘆混じりの溜息と共にそう呟くと、近侍である薬研の兄、一期一振はくすりと小さく笑った。
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