#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストは裏ぽんさんより。ありがとうございました!
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「世界を見て見聞を広げろ」と、王は僕に言った。
あの日あの命を受けていなければ、今、僕は何をしていたのだろう?
タルシスには、故郷とは違う温かで優しい風が吹く。
気球を駆る空は青く、眼下に見える大地は草木の緑が鮮やかだ。
僕は、この色彩をここに来るまで知らなかった。風は身を切るように冷たく厳しいもので、空は何時でも雪を降らす灰色の分厚い雲に覆われ、大地は氷雪に埋め尽くされているのが当たり前だった。初めてタルシスに来たときは、あまりの違いに感動すら覚えたものだ。
故郷の景色も嫌いではないけれど、それでも、タルシスの景色はとても美しく、素晴らしいものだと思う。この景色を知る機会を与えてくれた王には、感謝するばかりだ。
そんなことを考えていると、ふと、風の流れが少し変わったことに気付いた。
まさかFOEでも近付いてきたのだろうかと辺りを見回し――そして安堵する。視界に映ったのは魔物の姿ではなく、見知った冒険者の気球だったからだ。
「おーい、キルヨネン! 頼まれてた食材、取れたから持ってきたぞー!!」
「あぁ、わざわざありがとう!」
張り上げられた声に応え、笑う。タルシスに来るまでは、書物の知識からただの無法者だと思っていた冒険者だが、実際触れ合ってみればそんなことはなく、むしろ気のいい者が多い。例えばこうして、人の依頼を手伝ってくれるようなことも少なくないのだ。
土地に対して、魔物に対して、人に対して。新しいことを知るごとに、僕の世界は在り方を変えそして広がっていく。
いつか故郷に帰った時、僕の報告を受けて、王は何を思うのだろう。
僕の得た見聞は、国から出ることのない王の世界を広めることができるのだろうか。
――そうであればいいと、強く思う。
リクエストは裏ぽんさんより。ありがとうございました!
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「世界を見て見聞を広げろ」と、王は僕に言った。
あの日あの命を受けていなければ、今、僕は何をしていたのだろう?
タルシスには、故郷とは違う温かで優しい風が吹く。
気球を駆る空は青く、眼下に見える大地は草木の緑が鮮やかだ。
僕は、この色彩をここに来るまで知らなかった。風は身を切るように冷たく厳しいもので、空は何時でも雪を降らす灰色の分厚い雲に覆われ、大地は氷雪に埋め尽くされているのが当たり前だった。初めてタルシスに来たときは、あまりの違いに感動すら覚えたものだ。
故郷の景色も嫌いではないけれど、それでも、タルシスの景色はとても美しく、素晴らしいものだと思う。この景色を知る機会を与えてくれた王には、感謝するばかりだ。
そんなことを考えていると、ふと、風の流れが少し変わったことに気付いた。
まさかFOEでも近付いてきたのだろうかと辺りを見回し――そして安堵する。視界に映ったのは魔物の姿ではなく、見知った冒険者の気球だったからだ。
「おーい、キルヨネン! 頼まれてた食材、取れたから持ってきたぞー!!」
「あぁ、わざわざありがとう!」
張り上げられた声に応え、笑う。タルシスに来るまでは、書物の知識からただの無法者だと思っていた冒険者だが、実際触れ合ってみればそんなことはなく、むしろ気のいい者が多い。例えばこうして、人の依頼を手伝ってくれるようなことも少なくないのだ。
土地に対して、魔物に対して、人に対して。新しいことを知るごとに、僕の世界は在り方を変えそして広がっていく。
いつか故郷に帰った時、僕の報告を受けて、王は何を思うのだろう。
僕の得た見聞は、国から出ることのない王の世界を広めることができるのだろうか。
――そうであればいいと、強く思う。
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