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書き散らかしたもの置き場
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#リプ来たキャラごとに今思いついた書く予定なんてひとつもない小説の一部分を書く
リクエストはチャイさんより。ありがとうございました!
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 桜の下には屍体が埋まっているという。

 ならば私の足元にも誰かが埋まっているのかもしれないなと、ぼんやりとした頭で春のうららかな陽気に不釣り合いなことを考えた。
 軽く目を瞑り、ぼこん、と私の足元の土を突き破って骨の腕が生えてくる様を想像する。続いて逆の腕、それからしゃれこうべ。その様はまるでB級のホラー映画だけれど、こちらも幽霊なのでまぁ今更構うことはない。
 さて、白骨の彼だか彼女だかは、どんな性格をしているのだろう。私のことは見えるだろうか。見えたら、何か話が出来るだろうか。
 想像の中で益体もないことを考える。白骨死体でも腐乱死体でも何でもいい。この退屈さえ、紛らわせるなら。

 ……私は所謂、地縛霊という奴だ。
 生前、リストラと離婚の憂き目にあい、生きているのが嫌になって家の玄関先にある桜の木で首を吊って、命を絶ったはずだった。けれど何故かもう一度目覚めてしまい、気づいたら死んだときと同じように、ロープを首に巻き付けて、ぷらんと木の枝にぶら下がっていた。
 肉体がないのだから当たり前かもしれないが、吊られていても苦しさは全く無い。けれど代わりに、食い込むロープを外すことはどうしてもできず、結果、ずっとここに縛り付けられる生活を送っている。
 来る日も来る日も同じ場所から動くこともできず、ご飯を食べることもできず、誰かと話すこともできず、無為に日々を過ごすことしか許されていない。そんな地縛霊の生活は退屈の一言で、こうしてありもしない想像をすることくらいしか楽しみもない。あまりにも毎日変わり映えが無さすぎて、つまらなさでもう一回死んでしまえそうだとすら思う。いや、死ねたら楽になるのだが。
 はぁ、と溜息を吐くと同時、頭上から桜の花びらがひらりと落ちてきて、私の身体をすり抜けて何処かへと飛んで行く。
 それだけの光景が、ひどく羨ましいものに見えた。

 ……私もどうせ幽霊になるなら、あんな風に飛べるようになりたかったなぁ。

 叶いもしない望みを抱いた私を嗤うように、ロープがきしりと音を立てた。
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